サブバッテリーを自作すると必ず直面する仕組みのややこしさを解消してみようとした内容の続きです。まだ、Part.1/Part.2/Part.3の内容を読んでない方は下記から読めます!
前回は、車のメインバッテリーから充電する方法について深掘りしました。まずPart.1で浮き彫りになった問題点を振り返り、その後最初にヒューズをつけ安全性を高めました。次に走行充電器を導入し問題点解決をし、バッテリー残量・コンセントからも充電できるようにするなど便利に使用できるように改善しました。この仕組みに近いものがキャンピングカーなどに乗っている充電システムだとおもいます。
Part.4 となる今回は、“シガーソケットから充電” について深掘りしていきたいと思います。
車のエンジンルームのメインバッテリーから電源を取って走行充電にと色々いることを考えると、シガーソケットにさして充電できれば簡単で良いのにと思いますよね。とはいえ、基本的には車のメインバッテリーから充電するか、コンセント経由の充電が基本的にオススメされていてシガーソケット経由の充電は中々みないのも実際だと思います。
また、既製品のポータブル電源も悩んでいる方は下記記事にてボータブル電源を探すと必ず選択肢に入ってくるJackeryポータブル電源の2024年5月時点での全製品の比較をしています。ポータブル電源を選ぶ際に見るべきポイントも記載してありますので一度読んでみてください。
シガーソケットから充電
0. Part.1で浮き彫りになった課題と追加の問題点
※画像でも注意書きをしていますが、上記は危険なので作成しないでください。
まずPart.1で浮き彫りになった課題は逆流が発生してしまう問題です。近年の日本車はエンジンをオフにするとシガーソケットへの電気供給もオフになる事が多いです。その為、シガーソケットに差したままにして、ずっと電気を供給してしまい車のバッテリーが上がる事例は少ないです。ただ、携帯・モバイル バッテリー・サブバッテリーなど充電のためにシガーソケットに挿したままにして、電気が逆流する事があります。本来ならシガーソケットに逆流防止機能がついてる製品が基本ですが、実際はついてない物も出回っています。小さい電流のものなら大丈夫ですが、物によっては過電流でヒューズが飛ぶ可能性もある問題です。
追加の問題点
次に、追加の問題点について考えていきます。ここであげる問題が、車のメインバッテリーから充電するか、コンセント経由の充電が基本的にオススメ(使用)されており、シガーソケット経由の充電の仕組みがほとんどない理由です。
- 電力(W)の最大値が他に比べて低い
- 走行中の振動などで抜けやすい
- 抜けかけなどの接触抵抗によって熱を持つ
- 電圧が電気ロスなどもありサブバッテリーを満充電にするにはたりない
上記がおおまかな問題点です。まず1の電力の最大値が低いというのは、シガーソケットのヒューズは10A〜15A程度です。一般車のカーバッテリー電圧12Vに10A〜15Aとなると単純計算で120W〜180W が最大値。およそ、150Wほどになるため走行充電やコンセントからの充電に比べると満タンになるまでに多く時間がかかってしまいます。
次に2の走行中の振動などで抜けやすいというのは、シガーソケットの形の問題なのでどうしようもないです。実際車載冷蔵庫・ポータブル電源などを充電したつもりが、実際は抜けきらない位に抜けており稼働していなかったはあるあるです。一応、Amazonなどで“シガーソケット” “抜け防止”で調べると下記のような商品もあり抜けにくくなる対策はあります。
そして3の抜けかけなどの接触抵抗によって熱を持つです。同じ電圧でも電気を使う上で抵抗が増えれば増えるほど熱を持ちやすくなりますが、シガーソケットは差し口からプラグ へと流す際に使われている金属の通電性などから他の方法に比べて熱を持ちやすいです。そこへ、抜けかけるなどして抵抗がより増えてしまい、触ることのできない熱さになってしまう場合があります。元々タバコに火をつけるシガーライターを挿していたので多くの車のシガーソケットは耐熱ですが、近年はシガーライターを使わない為耐えられる温度を下げてる場合もあります。また、カー用品店などで販売されているシガーソケットに挿し、シガーソケットとUSB両方を使えるように増設できる物などは耐熱性が低いこともあります。そういった耐熱性が低いソケットを使用し抵抗が増して熱を強く発してしまった場合、プラグの樹脂が溶けたり最悪は火災になってしまいます。
最後は、シガーソケットから供給される電圧や電流が減りサブバッテリーを充電するのは力が足りない問題です。メインバッテリーから供給される電気はDC(直流)です。直流はまず電気を運ぶ距離が延びたり、他のものに電気供給などを行うごとに電圧などが減ります。また前述した抵抗も影響します。サブバッテリーの満充電に必要なのは約14V以上とも言われており、シガーソケットだけだと力不足です。
これら4点の問題から推測ですが、他の方法でサブバッテリーを運用しているのだと思います。とはいえ、シガーソケットを使用できれば車側の配線などを触らないで充電できそうで諦められないですよね。
1. 整流ダイオードを導入
こういったケーブルを使用しサブバッテリーに直接接続していた状態から、まず逆流防止のため整流ダイオードを導入します。
上記図のようになります。これだけでサブバッテリーからシガーソケットへ逆流してしまう状況を改善できます。ここで使用する整流ダイオードは車のシガーソケットに設定されている許容電流と同じか、それより低い物を選んでください。例えば、下記のものであれば10Aの整流ダイオードになります。
昇圧回路を組み込む
整流ダイオードを組み込んだ事で逆流はしなくなりましたが、満充電はできない問題は解決できていません。問題の解決方法は簡単で昇圧回路を組み込めばいいです。
といっても、昇圧すれば良いというわけでもなく、使用しているサブバッテリーによって耐えられる電圧がある点は要注意です。普通に過剰な電圧で充電すればバッテリーが壊れます。
リン酸鉄リチウムバッテリーであればLiTimeさんの例ですと14.6Vまでであったり、物によっては16V必要な物であったりバッテリー自体の癖もあるので一概にどれくらい昇圧する必要があるかはいえません。とある走行充電器(New-Era SBC-004)とかだと14.3Vに昇圧しているので走行充電器などの電圧を参考にしてみるのもありだとおもいます。
昇圧回路を組み込んだ図が上記になります。シガーソケットから来た電気を昇圧回路でサブバッテリーを満充電にするために必要な電圧にあげます。これで、サブバッテリーを満充電にできました。とはいえ、エンジンを切る・シガーソケットから抜くなどするまで電気が流れ続けてしまいます。そうなってしまうと過充電でバッテリーが痛むため、何かしら対策が必要になります。そこでソーラー発電に使用するチャージコントローラーを次に取り付けてみます。
チャージコントローラーを使用してみる
チャージコントローラーとは主にソーラーパネルをバッテリーなどにつなぐ際に使用する機器。バッテリーを監視して過充電・過電流を防止し、かつ逆流も防止してくれる機能を持っています。そのため、本来的な使い方ではありませんが満充電時には停止してくれる点。天候などで発電する量が変わるソーラー発電を適切に充電できるように調整してくれる点を考えるとシガーソケットを使用した充電においても使用可能だと思います。
おそらく、シガーソケットを使用してサブバッテリーを満充電にしようと考えると上記のようになると思います。最後にバッテリー残量を見られるようにモニターをつけるパターンも考えてみたいと思います。
バッテリーモニターを導入
こちらは、コンセントから充電や、メインバッテリーから充電と同じように設置します。これによりシガーソケットから充電においてもサブバッテリーの残量などを見ることができるようになると思います。
番外編: 一番簡単なシガーソケットから充電する方法
上記は一番簡単にシガーソケットを利用してサブバッテリーを充電しようと考えた場合に考えつく図になります。車のシガーソケットへインバーターを挿し、インバーターを利用し車用バッテリー充電器を使用してサブバッテリーを充電する仕組みです。とはいえ、電気的には無駄も多くなるかとは思います。
Part.4 まとめ
車にサブバッテリーを自作したい!ややこしくてわからないを解消したい人の助けになるメモ Part.4では、シガーソケットから充電する方法を発展させました。
Part.1で浮き彫りになった問題と追加の問題点で挙げた3 点
- シガーソケットへ電気が逆流してしまう
- 電圧が電気ロスなどによってサブバッテリーを満充電できない
- 走行中の振動などで抜けやすい
は今回の内容の中で整流ダイオード・昇圧回路・チャージコントローラーを導入することで解決することができました。抜けやすいに関しては抜けにくくできるツールを導入することで少しでも抜けにくくする対応策になります。
ただ、他の問題2点
- 電力(W)の最大値が他に比べて低い
- 抜けかけなどの接触抵抗によって強く熱を持つ
解決できませんでした。この2点に関しては、車のメインバッテリーの電圧と途中にあるヒューズの問題と、シガーソケット自体の構造が熱を持ちやすいためどうしようもないです。熱に関しては数時間シガーソケットに挿して充電したら抜くなどを行なって熱が強くたまりにくくする。接点になる部分を電気抵抗が少しでも少なくなるように綺麗にかつ通電しやすいものにするなどが限界なのではないかと思います。
シガープラグの樹脂自体が溶けて抜けなくなり使えなくなる場合などあるようなのでシガーソケットを利用する場合は特に意識する必要があります。
また、今回サブバッテリーとインバーターの間にヒューズを導入していない図を使っていますが、BMS制御などサブバッテリーに搭載されていない場合は必ず安全のためにヒューズ(ブレーカー)を導入するようにしてください。
Part.4でPart.1から考えてきたサブバッテリーを作りたいと考えた時、どういう順序で発展していくのかを追っていけたかなと思います。最初のものは作るのには適していない物の段階から、安全性を高め、利便性を高めていけるようにしていきました。シガーソケットから充電に関しては解決できない課題が残りましたが、他は実用的なものになったと思います。
冒頭にも書きましたが、電気を扱う時は細心の注意をしてください。場合によっては火災・破損など重大な事故につながります。電線の太さ、バッテリーに接続する際の順番、接続の仕方は正しいか、万が一の時の対策(ヒューズ等)は入れているか、電線を傷つけていないか等気をつけて楽しいDIYライフを!
用語集
サブバッテリー | 車に必要不可欠で必ず設置されているものがメインバッテリーといい、車のエンジンを停止した状態で家電製品など電気機器を使用するために車内に持ち込むバッテリーをサブバッテリーと呼ぶ |
インバーター | カーバッテリーは自家用車がDC12V(直流)、トラックなどがDC24Vである。このDC電流を家のコンセントと同じAC(交流)電流に変換する装置を指す。 |
車用バッテリー充電器 | 家のコンセントと同じAC100V(交流)を、カーバッテリーのDC12V/24Vへ変換しカーバッテリーを充電するために使用する装置 |
オルタネーター | 自動車に備え付けられている電気を生み出す装置。ナビ・パワーウィンドウ・ドライブレコーダー・エンジンの起動など日頃車に必要な電気を溜めておくのがメインバッテリー。そのメインバッテリーを充電するために発電機の働きをするのがオルタネーター |
ボディアース | 車は鉄でできており電気を通す。このことから車体にマイナス配線に必要となる電線の役割を担わす。端的に、マイナス電線=車体 となり、この接続のことをボディアースという。本来プラスもマイナスも電線が必要。しかし、マイナス側の大部分を車体が担ってくれる為、配線の簡素化・車体のサイズ・重量の軽減・コストの低下などが可能 |
シガーソケット | 車に付いている円形の挿し口のことを指す。以前はシガー、タバコに火をつけるシガーライターが設置されていたが近年では電源を取るためなどに使用される。 |
ACC電源 | アクセサリー電源とも呼ばれるACC電源。エンジンをかけずナビ・ミラーなどを動かす事ができる。長時間使用不可で、メインバッテリーがあがる原因となる。 |
ヒューズ | 電気回路に定格電流以上の過大電流が流れた時、回路を遮断して回路を保護し電気事故・電気火災などを防ぐために使用される部品 |
BMS | Battery Management Systemの略称。リチウムイオン電池などに導入されており、過電流・過充電・過剰放電・過熱 等の動作上問題が生じ安全が脅かされる可能性が生じた場合に電流を遮断するなどバッテリーを制御する仕組み |
定格電流 | 電気器具を安全に使用できる電流(A)の量。これを超えて電線などに負荷をかけた場合熱を持ちはじめ、火災など重大な事故を引き起こす。これを防ぐためヒューズを導入し、過大電流(制限を超えた電流)が流れた際に回路を保護するため遮断する |
シャント | 抵抗器で回路にながれている電流を測定するために用いる。単純な仕組みでありつつ精度が高い。日常的に電気回路などで使われており、コストが安く、耐久性があり、高精度に電流量をはかる事ができる |
シールド線 | シールド線は、その名の通りシールド(盾・遮蔽)がある線を指す。このシールドがあることで電磁波などのノイズとなる要素から芯線(線)の中を通る信号を守ることができる。 |
電磁接触機 | コンタクタ/コンタクタリレーと呼ばれ、回路のオンとオフ(開閉)をおこなう機能をもつ。例としては、aをしている時はa1をうごかす a→a1の動作をしている時、bが入力された場合a→a1を遮断しb→b1を行うようにするなどが可能となる。場合によってはa→A1を、bが入力された時b→A1へ切り替えるなども可能。 |
NO | 電磁接触機の”NO”は”Normal Open”の略でスイッチが開放状態 = つながっていないため通常時は電気を通さない |
NC | 電磁接触機の”NC”は”Normal Close”の略でスイッチが閉まっている状態 = 通常時につながっており電気を通す |
走行充電器 | アイソレーターとも呼ばれ、サブバッテリーを充電する上でオルタネーター・メインバッテリー・ソーラーパネルなどの配線を接続することで効率よく充電をおこなるための機器。主にメインバッテリーの状態をみた上で余剰分のみをサブバッテリーに流すなどをおこなう。 |
MPPT | Maximum Power Point Trackingの略。ソーラーパネルは天候(日照量)の影響を受けるため、最適な電圧と電流の組み合わせが変わる。これをMaximum Power Point(最大値)にTracking(調整制御)する仕組み。 |
整流ダイオード | 電気を一方向へ流すために使用される半導体部品。電気逆流による損傷などを防ぐために電子機器の中などで使用されています。 |
昇圧回路 | 入力電圧(V)を昇圧し、より高い電圧を出力するために使用される |
チャージコントローラー | 主にソーラーパネルを使用しバッテリーを充電する際に使用される。役割としては、過充電の防止・過電流の防止・逆流の防止などを担う。 |